当サイトはアフィリエイト広告を掲載しています
幸せな出産だけではない、死産や中期中絶の助産師としての役割
助産師の仕事をしている事を、友達や初めてお会いする人に言うと「毎日出産に立ち会えて幸せな仕事ね。」と言われることがほとんどです。
もちろん、その通りです。
しかし、生の反対には死が必ずあります。
元気いっぱいの赤ちゃんが産声をあげる出産と、とても静かな出産に私たちは立ち会います。そのことについてお話ししたいと思います。
新人時代・・・はじめは正常分娩から
新人の初めのころは、正常分娩、つまり妊婦も特に大きなリスクもなく、赤ちゃんも元気な状態で予測される分娩を基本的には扱います。これがすべての分娩の基礎となりますからね。
学生時代はたったの10件の分娩を取り上げて、実習を終えて、それから国家試験に向けて猛勉強する、というスタイルの学校がほとんどだと思います。
そのため、助産師として初めての分娩の取り扱いは久しぶりなんです。
久しぶりに扱う分娩、指導担当の先輩が見ている中での仕事、そんな新人と分かっていながら担当してくれて大丈夫と言ってくれた妊婦とその家族が見ている。この状態は本当に緊張します。
新人なので仕方がないんですけど、はじめての助産師としての分娩はとても緊張するし、怖いです!
そんな緊張いっぱい、プレッシャーの中の初分娩の取り扱い終了後、心の中には達成感と、ついに自分は助産師として働いているんだな、という自分自身の夢が叶ったことの喜びをかみしめるのです。
私だけではなく、同期や助産学校の同級生も同じように喜びをSNSに挙げているのをみて、
「私だけじゃないんだな~」としみじみ感じ、自分のことのように嬉しかったのを今でも覚えています。
私の勤めていた病院は間違いがないように、担当助産師が母子手帳の出産の欄に分娩時の記録を書いていました。
そこには、担当助産師の欄が!初めてそこに自分の名前を書いたときは本当に感激でした。
もちろん、反省点はいっぱいあるし、指導者からのきついお叱りを受けながらの仕事なので最初の頃は、自分の未熟さや悔しさで毎日泣いてばかりいました。
勤務していた病院が年間に1000件以上の分娩を取り扱うような大きな病院だったので、毎日毎日最低1件は分娩がありました。
毎日必死に正常分娩を取り扱い、1か月過ぎるころには一人で担当できるようにまで仕上げられるのです。
他の病院に勤めている助産学校時代の同級生も同じように経験を積んでいたので、どこの施設も似たような新人教育なのかな、と思います。
もちろん、個人の技量にもよるんですけれど。
そして、合併症を持った妊婦さんや、胎児奇形や疾患を持つ赤ちゃんを扱う病院でもあったので、正常分娩が取り扱えるようになった次は、
そのようなリスクを持った分娩を担当するようにもなりました。
あまりにも高度なリスクを持つ妊婦の分娩は勉強にならない、ということなので妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、第一糖尿病、バセドウ病、全身性エリテマトーデス、など
妊娠をしたからこそ患う疾患を持つ妊婦や、先天性のものや幼少期に発症してそのまま持病として疾患を持つ妊婦の担当をしていました。
この時も疾患の勉強や薬剤の取り扱いも+αで覚えなければいけないので大変でした・・・。
と、こんな感じで任せてもらえる分娩の幅が広がっていきます。
私の場合は、3か月を過ぎたあたりだったと思います。
中期中絶の分娩を初めて取り扱うことになりました。これも立派な出産です。
経験を積み、死産・中絶の担当を
私の勤めていた病院は死産や中絶で生まれてきた赤ちゃんや産んだ母へのケアにとても力を入れていました。赤ちゃんへのケアは通常エンゼルケアと呼ばれていました。
生まれてきた赤ちゃんたちはエンゼル=天使なのです。
死産にしろ、中絶にしろ亡くなった赤ちゃんとお母さんたちは対面します。
その時に、赤ちゃんとの写真を撮るか、母子手帳にはこの出産のことを記載するか、そもそもとして赤ちゃんと対面するか、など出産する前にお母さんたちに確認します。
あとは、赤ちゃんたちには洋服を着て棺桶に入ってもらうのですが、その服をお母さんが作成することも病院側から提案させていただいてました。
結構、「赤ちゃんの洋服を自分で縫いたい」と希望される方は多かったです。
育ててあげられなかった代わりに、亡くなったわが子にできることはないか、と探している方が多いのではないかと思います。
そして、死産や中期中絶の流れとしては誘発分娩と同じです。
薬剤を使用したり、子宮の入り口を無理やり広げる処置をして、分娩を進めていきます。
個人差はあるのですが、けっこうお母さんとお話しする機会が多いです。
気丈にふるまい笑顔を見せる人、表情が乏しい人、涙を見せる人、反応は様々です。
出産後のケアももちろん大切ですが、分娩中にも心のケアをしっかりするのが私たち助産師の役割だと思います。
私たちが産婦に向き合うからこそ、お母さんたちも死産、中絶ということにしっかり向き合えることができるのではないでしょうか。
お話しを好む人にはたくさん話を聞いて、こちらからも話すし、逆に静かに過ごしたいという人には、必要最低限の声掛けやケア以外はしないようにします。
出産を終えた瞬間というのはとても静かです。中絶の場合は赤ちゃんが頑張って息を吸おうとしたり動いたりしているので、それを見守って静かになるのをこちらも、お母さんのケアをしながら待ちます。
静かに、お母さんの鳴き声が分娩室に響きます。
出産後の心のケア
死産や中絶の場合、旦那さんや家族の付き添いは大丈夫でしたが、赤ちゃんが生まれてくる瞬間といのは立ち合いは基本的にはしていません。当然ですが。
私たちが、赤ちゃんの計測やお母さんの産後のケアが終わった後にお母さんが作ってくれた服を着させてあげて、きれいにしてから家族と対面してもらいます。
とても辛い場面ですが、助産師としてはしっかり体はもちろん心のサポートをすることが重要になってきます。
後からお会いしたお母さんたちから「あの時の言葉をずっと覚えています。」「あの時、手を握って励ましてくれてたことがとてもうれしかったです。」
という意見をお聞きすることが多いです。やはり分娩の記憶というのは強い思い出なので、その時の助産師の行動や発言を鮮明に覚えているんだと思います。
だからこそ、死産や中絶だからといって悲観的にならず
「この子を産んでよかった」
と思えるような分娩の環境づくりが大切で、助産師の力のみせどころだと思っています。
静かな出産のサポート
助産師として働くにあたり、すべてが幸せで、元気な赤ちゃんに会える分娩ばかりではない、といのはみなさんご存知だと思います。
だからこそ、死産や中絶の分娩のケアにもしっかり力を入れて、出産のサポートをすべきです。
病院によって、私の勤めていた病院のようにエンゼルケアに力を入れている病院もあります。
中には、死産・中絶を体験した親の会、というのを設立して定期的に会合を開いて意見交換や交流の場を設けている病院もあります。
転職や就職の際に、上記のような病院を探している、と伝えれば転職サイトのコンサルタントがあなたの希望に沿った病院を紹介してくれます。
もしあなたが、エンゼルケアにも興味を持っているのであれば是非、そのことを伝えてください。
「はじめは、気が重いしあまり興味が無かったけど・・・。」
「もっとお母さんたちの心のケアのサポートをしたい、勉強したい!」
考えも途中で変わるかもしれません。
以前よりも意欲的に働けるようになった、自分のしたいことができる環境だ、と思える職場探しを全力でサポートします。
執筆者情報
助産師の求人と転職 編集部
助産師の求人と転職は、厚生労働大臣から転職サポート(有料職業紹介事業)の許可を受けた(許可番号13-ユ-314851)株式会社ドリームウェイが運営するメディアです。転職サポートの経験を活かし、定期的なリライトや専門書を用いたファクトチェックなど、ユーザーに正確な最新情報を届けられるよう努めています。